大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和36年(あ)1168号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人両名の負担とする。

理由

被告人両名の弁護人逸見惣作、同森静の上告趣意第一点について。

所論は原判決の是認した第一審判決の適用法令たる爆発物取締罰則一条の憲法一一条、一三条、二五条(三五条とあるのは二五条の誤記と認める。)、三六条違反をいうけれども、所論の実質は結局右罰則一条の法定刑の過重であること、特に懲役刑の短期が七年であって、刑法の酌量減軽の規定を適用しても執行猶予を付する余地のないことを非難するに外ならないと解される。しかし、右罰則一条所定の犯罪行為に対し所定の如き重い法定刑を定めたとしても、それは立法政策の問題となりうるに止まり、憲法適否の問題でなく立法機関の裁量に委ねられた範囲のものであり、右法定刑も何ら憲法三六条にいう残虐な刑罰であるということはできない。このことは昭和二三年(れ)第一〇三三号同年一二月一五日大法廷判決(集二巻一三号一七八三頁)、昭和二二年(れ)第三二三号同二三年六月二三日大法廷判決(集二巻七号七七七頁)の趣旨に照らして明らかである。論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人両名の弁護人大塚春富名義の上告趣意第一点、第二点について。

所論はいずれも事実誤認及びこれを前提とする単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また各被告人につき記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条、一八一条一項本文により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例